2013年3月10日

【ArtFM 静嘉堂文庫美術館「曜変・油滴天目 茶道具名品展」(東京 世田谷)】

東京世田谷の静嘉堂文庫美術館へ行った。

三菱岩崎家の一級品群を所蔵する当館、
便は悪くとも訪問し甲斐を感じる。

展覧会は「茶道具名品展」で、
曜変天目、付藻茄子、牧谿(もっけい)、長次郎、仁清等々、
歴史的超名品がズラリ。

誰もの目を引く
曜変天目の青白と油滴天目の灰色の滴には、
宇宙規模の輪廻を感じた。

/アートツアラースグル
 静嘉堂文庫美術館の建屋です。岡本静嘉堂緑地内に位置します。岡本静嘉堂緑地は元々岩崎家(三菱の創業家)の敷地で、当建屋の他に大きい納骨堂もあります。
 ちなみに、当館訪問は2度目ながら、レポートは初。以前は、美術館に行ってもほぼレポートしていませんでした。

 建屋に面白さはほぼないので、初めて伺った際は、まさか名品の宝庫だと思いませんでした。

 庭園と建屋です。こう見ると、高級住宅って感じですね。

 庭です。訪問したのは2月末、梅が咲き始めていました。



 梅の見頃は「咲き始め」です。桜の印象が強いと「満開」が見頃に思いますが、梅の場合は、満開時には、1つ1つの花の形に本来の美しさがありません。1つの花に養分が集中する、「咲き始め」に美があります。ご覧になる際には、日当たりの加減で開花に差がでていると思うので、ぜひ比べてみて下さい。
 加えて言えば、梅の見どころは枝・幹にもあります。ゴツゴツとした幹の男らしさと可憐な花、お楽しみ下さい。

 国宝、曜変天目茶碗「銘 稲葉」です(※当画像はネットより拝借)。
 焼物が分かる分からないなど関係なく、誰もが魅力を感じる逸品ですよね。この滴、よく星に例えられます。
 ただ、ハレー彗星観測のために1986年にグアムにまで行ったような天文少年の私にとって(当時 小学5年生)、「星」というのはあまりに漠然としている表現で、あまり使う気になりません。
 私の場合、その青白さと白さから、高温のガスに包まれるM45(プレアデス星団)や、M42(オリオン大星雲)の中にある散開星団トラペジウムを連想します。つまり、けっこう具体的で理屈っぽくなるわけです。この辺り、理系に育った人間だなぁと自覚させられるところでして、そんな私がアートに強い興味を示すとは不思議だなぁと思うところでもあります。
 ちなみに、星(恒星)の一生において青白さは若さの証で(赤が老いの証)、M45やトラペジウムは、生まれたてであったり若かったりします。ですので、私の当品に対する連想は「生」ということになるわけです。う~ん、数学の「証明」のようですね(笑)。
 ところで、曜変天目茶碗は、中国南宋時代の名品で、世界に3つしかありません。そのいずれもが日本にあります。1つは静嘉堂文庫美術館の当品、1つは大阪の藤田美術館、1つは京都の大徳寺龍光院です。
 藤田美術館へは以前お邪魔しましたが、残念ながら曜変天目は拝見できませんでした。またお邪魔せねばなりません。

 油滴天目茶碗です(※当画像はネットより拝借)。
 口が広いため、全てを受け止めるような、吸い込むような印象を受けます。鮮やかさは曜変天目とは対照的で、内側には目立った色がありません。黒と灰色です。
 黒とは、反応を失った恒星、すなわち死を連想します。吸い込まれるような印象も考えれば、重い恒星の死後の産物、ブラックホールを意味するのかもしれません。
 ただ、恒星にとって「死」は「次の生」の始まりです。宗教的な意味合いを抜きに、現実として輪廻が起こっています。そもそも、曜変天目や油滴天目には宇宙規模の器量を感じますが、この両者が揃うことで、器量だけでなく輪廻まで感じさせられます。焼物とは大変面白いものです。

 右、茶入「付藻茄子(つくもなす)」、左、「松本茄子」です(※当画像はネットより拝借)。
 両者ともに大名物で、信長-秀吉-家康の手に渡った歴史的な品です。実は大阪城と共に砕けた品なのですが、死に物狂いで破片がかき集められ、漆によって復活しました。天下人の心も乱す品ということですね。

 楽 長次郎「黒楽茶碗 紙屋黒」です(※当画像はネットより拝借)。
 曜変天目を載せていることで地味ぃに思われるかもしれませんが、利休が見出した焼物の名家「楽家」初代 長次郎の作品ということもあり、超名品です。 

 野々村仁清「色絵吉野山図茶壷」です(※当画像はネットより拝借)。
 これまた名品中の名品。このように、名品だらけの展覧会でした。
 ちなみに、レポート中には宋の時代の画僧 牧谿(もっけい)の名も書き、その名品の量の多さを示しましたが、この展覧会にはもっともっと多くの名品がありました。例えば、
 井戸茶碗「越後」、
 灰被天目(はいかつぎてんもく)「埋火(うずみび)」、
 楽慶入(楽家11代)「吉田」、
 楽弘入(楽家12代)「三千院」、
 尾形乾山「銹絵染付春草図筒茶碗」(大好き!)、
 千利休、古田織部、
等々です。
 実のところ、前回訪問した時もほぼ同じ作品群を拝見したのですが、見える景色は全く違いました。自身の成長と捉えておくとしましょう。

 さて、電車です。近所ということで電車を撮ろうとは思っていなかったのですが、この風景は気になり、撮ってみました。小田急電鉄の成城学園前駅です。

〒157-0076 
東京都世田谷区岡本2-23-1  
03-3700-0007
開館時間:午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日:毎週月曜日
 (祝日の場合は開館、翌火曜日休館)
 (展覧会前後期入れ替えの臨時休館あり)
 (展覧会期間以外は休館)
入館料:一般800円 大高生500円
・二子玉川駅からバス10分+徒歩5分
・成城学園前駅からバス15分+徒歩10分
 (敷地が広く高低差があるので、建屋まではプラス5分程かかります)

2 件のコメント:

  1. 藤田美術館の曜変天目は毎年正月のみです。
    静嘉堂文庫の裏門から出たら、ユーミンの家や仲代達矢の無名塾が有りますよ。

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  2. 正月のみですか・・。正月に帰省をしない私には厳しいですね。無名塾、あのあたりとは思いもしませんでした。今度はちょっと拝見してみるとしましょう。

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